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落ちるオブジェクト

正六面体が垂直方向に落下する ここは心臓の内側で、絡繰り色を展開する透けるカードリッジ すべからく滑るよう、吸い込まれるように白かかった窪みを目指す ボクはその過程を見るだけで心が尖って、けれど楽しくなる ストンと入るその瞬間を心待ちにしながら、 人懐っこいズボンを振って、束縛とは縁のない脚を出す 何もない広い地面の窪みにようやく、その正六面体は着地する きっとこれが納まるべき心象風景だったのだ 地に足をつけた正六面体からは女の子が出てくるかもしれない 薄っぺらくて濃厚な最終回答が出てくるかもしれないし、 思想の偏りを許さない不動の天秤が零れ落ちるかもしれない それならいいなとボクは思った。それなら多分、ワクワクするなと、 見上げても空、面白みのない普遍な空、でも空だ、空っぽじゃない この正六面体はどこから落ちてきたのだろう 未確認飛行物体を追い落としてきたかのようなキューブ 抱え損ねた無機質を持て余すかのように、 模様の無い完成された正六面体 ボクはそこまで歩いたり、走ったり、駈け寄ったりして、触る。 冷たくて硬くて、時の移ろいとは普遍そうな、 賞味期限の無さそうな正六面体だ ボクはそれを眺めていた。多分、どうだろう 落ち着くからかもしれない 心を無理に揺れ動かさないボクを内包してくれているかのような、 そんな硬さと柔らかさを両立するかのような落ち着きに、 ボクはいい意味で、ため息を吐き潰したのである。 愛でたし、愛でたし


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